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2014.06.22

スペイン バルセロナ ザイゴマインプラント研修報告:世界最高水準のインプラントクリニックを目指して

私 、高橋衛は、5月23、24日の2日間にわたりスペインのバルセロナ病院にて開催された、ザイゴマインプラント(Zygoma Implant)研修に参加しました。ほとんどの方が、ザイゴマインプラント(Zygoma Implant)という言葉を初めて耳にされると思いますので、これの説明を兼ねて研修報告をしたいと思います。


(サグラダ・ファミリア)           (カサ・ミラ)

(モンセラ修道院)

 今回のバルセロナ研修は、通常の研修とは異なる特別な内容でした。まず1日目は、二人の世界的第一人者(後述)による講義と、大型モニターを見ながらの詳細な解説付の手術見学がありました。そして2日目は、バルセロナ大学解剖室にてカダバーコース(解剖実習)があり、ザイゴマインプラントのトレーニングを受けて来ました。

 ザイゴマインプラントとは、重度の歯周病や虫歯、口腔内(口の中)の病気の為に上顎(上あご)の骨が残り少なくなり、普通のインプラント治療ができない状態になってしまった人に対して行なう特別なインプラント治療です。上顎骨(上あごのほね)が無くなっても、ほとんどの人は頬骨(ほおぼね)は残っています。しかも頰骨には非常に硬い骨があり、インプラントの固定源として理想的な部分と言われています。頬骨に埋めるインプラントを、頰骨(Zygomatic bone)の名前から「ザイゴマインプラント」と呼ばれています。

 ザイゴマインプラントは、一般的な歯科医院で行なわれているインプラントと比較し、技術的に非常に難しい治療です。また、All-on-4(オールオンフォーと読みます。たった一日で駄目になった歯を全部抜いて、インプラントを4本埋めて、手術当日数時間後に固定式の仮歯が入る治療方法)などの治療経験が少ない歯科医にとってはさらにハードルの高い治療です。そのため、日本国内でザイゴマインプラント治療を行なっている歯科医師は極わずかです。これまで私は、海外の研修に参加しザイゴマインプラントの技術を学び、習得し、治療を行なってまいりました。しかし、現状に甘んじること無く、常に患者さんにベストな治療を提供し、患者さんに喜んで頂きたいと考え、スペインの研修に臨みました。今回は、ザイゴマインプラントの世界的権威であるDr.Davo(ダヴォ先生)とDr.Malevez(マラベ先生)の二人が揃う特別セミナーでした。二人とも顎顔面外科医(あごや顔の手術をする専門医)ですが、Dr.Malevez(マラベ先生)は「ザイゴマインプラントの母」と呼ばれ、多くの先生方に尊敬されている先生です。Dr.Davo(ダヴォ先生)をはじめDr.Aparicio(アパリシオというザイゴマインプラントで有名な先生)、All-on-4を開発したDr.Malo(マロ先生)など世界的に活躍している先生は, Dr.Malevez(マラベ先生)のもとで指導を受けています(現在、医療法人高橋衛歯科医院は、All-on-4開発者であるDr.Maloのマロクリニック東京と提携しております)。日本人3人を含む、世界各国の20人程の歯科医師が参加した、少人数制の内容の充実した研修でした。

 今回最も印象的で勉強になったのは、解剖実習と手術見学です。解剖実習では、上顎全部の抜歯と上顎骨形成手術(骨の形を整える手術)、Quad Zygoma Implant (クワッドザイゴマ、特に骨が無い人に行なう方法で、ザイゴマインプラントを4本入れる難易度の高い手術)のトレーニングをしました。参加者のほとんどの人が片側1本だけの埋入をしていましたが、私だけ全顎にわたりすべての処置を行うトレーニングを行なうことが出来たのは非常に幸運でした。

 Dr.Davo(ダヴォ先生)による手術は、Quad Zygoma Implant(頰骨にインプラントを4本埋める方法)をライブで行いました。ここでは、手術のコツ、危険を回避し安全に行なう方法、何をどこまで行なうと最善の結果が出せるかという事が良く理解できました。貴重な手術を見学し、文献やテキストにも書いていない解説を聞くことができました。

  講義は、ザイゴマインプラントのコンセプトと概要から、理論と治療方法、長期経過、合併症(他のインプラントに比較し頻度は極めて低い)とその対応などについての内容でした。ザイゴマインプラントは、インプラント治療の中でもごく限られた先生が行なっている先端技術です。しかし、Dr.Malevez(マラベ先生)は、自分たちは最先端を追求しているのではなく、いかに患者さんの為になるか、日常生活に支障をきたし困っている患者さんの人生を取り戻し、QOL(生活の質)を改善してあげる事が最も大切なことであると述べていました。私はこのDr.Malevez(マラベ先生)の考え方や態度を支持し、心から共感しました。講義の中でも繰り返し患者さん中心の歯科医療とザイゴマインプラントのコンセプトと目的について述べ、患者さんのQOL(生活の質)と幸福度を向上させる為の方法や、従来のザイゴマインプラントの改善点などについて述べられていました。そしてDr.Davo(ダヴォ先生)らは、患者さんの満足度、QOLの回復度をザイゴマインプラント治療前後と他の治療と比較して、多くの指標を使って調査しました。その結果、ザイゴマインプラント治療後はQOLが著しく改善され、治療後の不快症状も無く非常に満足度が高いという結果が得られたと述べていました。

 ザイゴマインプラントは、最初は近代歯科インプラントのパイオニアであるブローネマルク先生が、顎骨腫瘍切除後(顔が変形する程大きく癌を取り除く手術)の再建の為に考案した特殊なインプラントのようです。その後、Dr.Malevez(マラベ先生)とDr.Davo(ダヴォ先生)は、そのインプラントを歯だけでなく骨も無くなった患者さんに応用し、1999年頃にザイゴマインプラントのコンセプトを打ち立てました。その後、改良を重ね変遷し、今日の方法にまで確立されてきたそうです。ザイゴマインプラントのイラストと写真を掲載しました。上あごの歯があった部分から頬骨のところまで、長くて丈夫なインプラントを埋めます。これは普通のインプラントが直径4mm,長さ10mm程のものを使用するのに対して、直径5mm,長さが45mm前後のものを使用します。これは、ノーベルバイオケア社のインプラントです。私も使用していますが、非常に丈夫でしっかりしたものです。日本では厚生労働省に安全性と有効性が承認されており、私も実際に使用していて安心感があります。

 ザイゴマインプラントは、上顎の骨が残り少ないか、ほとんど無くなった方に対して行なわれるインプラント治療です。従来の治療方法は、取り外し式の入れ歯か、骨移植手術(下あごや腰骨から採ってくる)を行ない、骨を造ってからインプラントを埋めていました。入れ歯は、食事や会話の時に動いて落ちてくるので使えない、人前で恥ずかしい思いをし、今までさんざん入れ歯で苦労して悩み、他に治療法が無かったから仕方なく使用しているけれど、入れ歯はもうこりごりだと言う人が殆どです。骨移植手術は、体への負担が大きい、手術が難しく大変、手術の難易度が高く手術を行なう術者によって成功率はまちまちで、決して成功率が高いとはいえません。また、治療期間が非常に長くなるなどの問題点があります。これらに対してザイゴマインプラントは、骨移植の必要が無く、低侵襲(体への負担が少ない)の手術で、即時に機能回復できます(手術当日に固定式の仮の歯が入ります)。しかも通常行なわれているインプラント治療に比較して、インプラントの生存率、成功率が極めて高い結果が報告されています。頬骨にインプラントを入れるという事を聞くと、驚かれる人が多いのですが、Dr.Malevez(マラベ先生)とDr.Davo(ダヴォ先生)は、ザイゴマインプラントは、合併症も少なく安全で、手術後即時に患者さんのQOLを改善できる素晴らしい方法であると結論づけていました。

 ザイゴマインプラントは、日本においてはほとんど知られてはいませんが、骨が無くて入れ歯や普通のインプラント治療も難しく、食事や会話、社会生活にも支障をきたし、悩んでいる患者さんに多くの恩恵をもたらすことができる治療方法です。

 医療法人 高橋衛歯科医院ならびにマモ インプラントクリニック マリオスではザイゴマインプラントやオールオンフォーという治療ができる県内唯一の歯科医院です。高橋衛歯科医院は、本当に歯の事で困り、治療が難しく、様々な悩みやコンプレックスを持った患者さんのお役に立つことができます。歯の悩みを解決し、本当に充実した楽しい人生、笑顔が絶えない幸せな人生を、一日でも早く、一人でも多くの方に迎えてほしいと願っております。

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